別れ

人は生きていれば必ず死というお別れをしなければならない。それは至極当然の事で「絶対」である事に変わりは無い。その別れは尊いものであると思うし、一つの歴史の終焉でもあると思う。
今日は社長と一緒に当社を創立した方の葬儀だった。全くのゼロからの出発を社長と一緒に苦労しながら歩いてきた人だ。僕が生まれた時から一緒に仕事をしていた人だし、いつも一緒にいてくれた人だった。子供の頃は重機やトラックに乗せてくれて現場にも連れて行ってくれたりした。
大学を卒業し、2年後にこの会社に戻ってからは、時に厳しく時に優しく仕事というものを教えてくれた。蕎麦を打つのが大好きで、蕎麦を打つといつも大量に持ってきてくれ、上手そうに食べている僕を嬉しそうに見てくれていた人だった。
酒はビールが大好きで「一番絞り」しか飲まないという徹底ぶり。食にはこだわりがある人だった。
気性も僕と同じ短気でめんどっくさい事が大嫌い。現場でもパッパッとこなす事がなによりも好きで、こうと思ったら曲げない性格なので時には思い切りけんかした事もある。

11日の日曜日。昼を食べに近所のラーメン屋さんに家族で出かけ、農協祭りに立ち寄ったところでその報を聞いた。まさに絶句だった。ちょうど一週間前のふれあい祭りでばったり会って立ち話をしたから余計である。
ご家族の方が最期を看取った後に「社長には直接伝えたい」との意向で我が家に立ち寄ってくれたのだった。父は全てを察し僕に電話をくれた。

65歳というまだまだ早い年齢での旅立ち。

棺におさまる姿はあまりにも不自然で今にも起きてきそうな。そんな思いで僕は見つめていた。昨晩の通夜は本堂に上がっての参列だったが、今日は妻と一緒に一般の人たちと一緒に参列した。しかし・・・最後のお別れではどうしても「ありがとう」と伝えたくて本堂に上がって冷たくなった顔の横に花を添えた。
僕と一緒に歩いた時間は彼にとってはそう長い時間では無いけれど、僕にとっては今の僕を作ってくれた貴重な時間だったから。本当にいなくなってしまったと言う実感はまだない。「おーいそばもって来たぞ!」とドアを開けて入ってきそうな感じがする。

本当に今までありがとうございました。
どうか安らかにお眠りください。

さようなら。くりさん。