ISOの認証を取り消しました

2回目の定期更新審査を11月に控え、認証機関から審査の案内が届いた。
ISO9001は品質マネージメントシステムで製品の品質を確保する上で必要なことをマニュアル化したもの。
たとえば、企画に適合しない商品が発生した場合、その製造プロセスの中で何があったかをトレースすることができる。また、その再発防止をマニュアルにのっとって策を作り実践することによりその発生を防止することができる。
役割分担や仕事の流れをマニュアル化して明確にすることによりより効率的な営業活動につなげることができる。
まだまだその利点はたくさんあるが、建設業という視点から考えると・・・というより当社の視点から考えると
あまり意味のない結果であった。
同じ製品を延々と作るような工場などではかなりの効果を得ることができるであろう。そのマニュアルという性質から考えれば非常に有効であると思う。当然、土木業界も規格に準じた施工を実施しているし、当社もその基準を満たした工事をしている。だからこそ公共工事などの厳しい検査も合格して竣工させていただいている。

毎日違うものを「生産」している当社においてマニュアルを全てあてはめてしまうと様々な不具合が発生する。
たとえば一口に舗装現場と言っても高速道路から水溜りの補修まで様々。ひとつとして同じ条件の現場はない。
現場が違うのに統一したマニュアルを無理やり当てはめることに疑問を感じていた。最初はその有効性に大きな期待をして取得活動を行ったが、最終的には無駄な書類を作るために費やした時間と費用は無駄になってしまった。
しかし、僕自身がその認証に疑問を抱き始めたのは第一回の更新審査のときだった。現場は突発的なことが常に発生するし、その発生に対してマニュアルなどは全く機能しなかった。突発事項は「人」が考え、「人」が判断し、「人」が行うことであり、その責は社の長が負う。それはマニュアルに書かずともして当然のことである。

当社においては日々の業務をマニュアル化することはあまりにも不自然であったと今では思う。
ましてや、建設業をマニュアル化する意味が無いとやってみて感じたことだ。
当然、ISOにおいて有効なシステムはたくさんある。
だから、その良い部分を残して自社で継続してPDCAはまわしていく。

年間で数百万もの多額のお金をかけてやるべきものなのだろうか?
社員に負担をかけてまで「意味無いな・・・」と思うことをさせる必要は無いと判断した。
失敗を反省して失敗を防止する。計画を立ててその計画に基づき実行する。
それはどんな形であれ全ての企業がやっていることであるし、それが無ければ生産することはできない。
あえて、高額を払って他人に監査をして認めてもらわなくても良いと判断した。

形だけのISOや取得していることをステータスとするような考えは恥ずかしながらあった。みんなが取っているから回りがやっているからという考えもあった。勉強していて有効だなと思うこともあった。しかし、現実という場に当てはめるとそれは負担でしかなかった。「やめる」という決断は「始める」という決断より勇気がいる。これもISOを取っていなかったらわからなかったこと。無意味ではなかったが「益」としての効果は少なかったように思う。せっかく取得したんだから・・・という思いも無いわけではないが、不要な部分のシステムも運用しなくてはならないということは無視することができなかった。

しかし、ISO9001においての大命題である「顧客満足」は絶対に忘れてはならない。
必要であるものだけを残していく。それもひとつの経営者の選択であると思う管理人である。